こんにちは。じゃっくです。
某広告系企業で採用担当やってます。
大学2〜3年生の方は卒業後の進路は決まっていますか?3年生の場合はインターンシップや会社説明会を始め就職活動も本格化しているものと思われます(2022年1月現在)。
理系学部に在籍している方にとっては、「大学院進学」も選択肢に入っていると思います(あるいは、既に大学院進学を前提にしている方も多いと思います)。
私も理系大学院に進学し、修士課程を修了後に就職しました。そして、現在は当時の専攻とは関係ない広告業界で人事担当になっています。
現在は大学院に進学したことも、現在の会社に就職したこともプラスの経験として捉えています。
しかし、就職活動時には色々と迷いがあったことも事実でした。
ある一定の大学については大学院進学が当たり前になっている一方で、ほとんど大学院進学せずに就職するような大学もあります。
周囲の風潮に流されて進路を決めてしまったり、学歴だけのために院進学、勉強するのが嫌だから就職といった安易なキャリア選択をする前に、自分自身のキャリアについて考えてみましょう!
大学院進学の現状
文部科学省発表の資料によると、大学院の推計進学率は5.5%となっています。
※参考:大学院の現状を示す基本的なデータ(文部科学省)
また、内訳としては工学系などの理系専攻が60%以上となっています。文系と比べて理系学部の方が大学院進学率が高いという点は、一般論的な見解とも一致しているでしょう。
また、「大学卒と大学院卒で収入や待遇にどの程度違いがあるのか」という観点では、大学院卒の方が初任給・生涯賃金ともに高い傾向にあります。
※参考:https://acaric.jp/articles/column/1343
しかし、学部・大学院の待遇差のある企業とそうでない企業もあり、業界・職種によっては大学院卒と学部卒とで待遇が変わらないケースもあります。そういった条件・環境面も踏まえて、学部卒での就職と大学院卒での就職という両方のキャリアを比較検討すべきです。
余談ですが、アメリカでは大学院卒と学部卒の給与格差は日本以上に大きいと言われています(但し、州・大学・職種によってもかわります)。また、アメリカの場合は大学院在学時点で給料が発生する場合も多く、大学に雇われている研究員という側面が強くなります。実質的に収入を得ながら大学院卒業の学歴も得られることになり、生涯賃金でみると日本以上に学部卒と大学院卒の格差は大きいと言えます。
但し、アメリカの場合は大学院生の採用・雇用は新卒学生採用(=ポテンシャル採用)ではなく、経験者採用(=即戦力採用)としての側面が強いことも背景にあります。大学院在学中の競争も激しく、卒業も日本以上にハードルが高く、結果が出なければ卒業前に解雇されるケースもあります。
院進学と就職を考える際に考えるべき5つのこと
日本の場合、大学院修了(修士・博士)と大学卒業(学士)の差は、海外(アメリカ)ほど大きくないことは理解いただいたかと思います。「大学院進学=キャリア・就職に有利」という構図は描けない可能性も考慮した上で、学生を2年間継続するかどうかを判断しなければなりません。結果的に大学卒でも就職できる企業や職業に大学院卒で就く場合、2年分の収入・時間・社会人経験・スキルなどを犠牲にするということにもなります。
但し、すべての大学院生が同じ条件に当てはまるかと言えばそうではありません。また、私も大学院に2年間在学していましたが、その2年間の研究室での経験は他では得難いものでした。また、学部卒業の場合に実質的に半年~1年程度の研究しかできないということにもなり得ますし、「その分野を学びたい・研究したい」という思いを持って大学受験を頑張って進学した人にとっては、4年で卒業することも勿体ないという部分もあります。
そこで、大学院進学と就職について、5つの視点・ポイントで見てみましょう。
自身の所属学部学科の現状について
理系学部といっても専攻は様々です。分類の定義は様々ですが、例えば以下のように分類できます。
・工学系(機械・電気・電子など)
・情報系
・建築土木系
・ライフサイエンス系(薬学・農学・生物学・化学など)
・その他理学系(数学・物理学・地学など)
ご自身の学部や院進学する場合の研究科などの専攻分野がどの領域に当たるのか、確認してみましょう。同一の学部でも学科・コース・専攻・研究室によっては、上記の分類と異なる場合もあります。
そして、大学院進学率や学部・大学院別の就職先企業(業界・職種)などを情報収集してみましょう。
就職実績のある業界や企業に必ずしも就職する訳ではありませんが、現時点で「特に就職を意識していない・準備していない」という方は参考にしてみてると良いでしょう。まったく何の基準もないまま全業界・全職種を見ていくよりもきっかけや基準になり得ると思います。
大学院(修士課程)修了後の進路選択の幅に差があるか
自分の学部学科の進路が把握できたら学部卒と院卒の就職先を比較してみましょう。
ここは企業だけでなく「職種」まで情報が得られるように情報収集して欲しいです。キャリアセンターや就職課に情報がない場合は、教授・先輩など人づてに獲得できる情報でもOKです。
※学部学科の就職担当教官などが把握しているケースが多いと思います
一般的に、研究開発職等の専門職については大学院(修士以上)卒が前提条件となっているケースがあります。研究職・開発職などを目指す場合は大学院進学を視野にいれましょう。
ただし、研究開発職への就職割合は学部学科によって差がある傾向にあります。
これは日本企業の産業構造によるところが大きいですが、就職環境は「工学系>ライフサイエンス系」という環境にあります。
工学系の場合、基礎研究系〜開発エンジニアなど職種としての幅も広く、業界的にも機械、半導体・電子・電気機器 、自動車・自動車部品、家電・AV機器、輸送機器、医療用機器、工作機器、精密機器、プラントエンジニアリングなどです。それぞれ大企業〜中堅企業まで多様な企業があり、多数の開発者・エンジニアなどが活躍しています。
一方でライフサイエンス系の場合、研究開発職は限定的な傾向にあります。製薬、食品、化粧品、化学石油、素材(ゴム・ガラス)、金属などですが、工業系と比較すると企業数や募集人数が少ない傾向にあります。
研究職を目指すには大学院進学を視野に入れる必要がありますが、保証されている訳ではありませんん。例えば日本で一番大きな武田薬品工業でも研究系職種の募集人数は数名〜10名ほどではないかと推測されます。その一方で、東京大学大学院のライフサイエンス系研究科(薬学・理学・農学など)の在籍数だけで1学年数百名以上はいるはずです。
専攻分野によって専門職への就職難易度は差があります。それを踏まえて大学院に進学した場合の進路とそうでないケースの進路について冷静に客観的に考えてみましょう。
博士課程への進学は選択肢に入れるのか
本当の意味で「研究」を続けるということであれば、博士課程への進学も視野に入れることも必要になります。
・修士課程:大学院で2年間の研究が必要になります。課程修了すると「修士号」が取得できます。
・博士課程:修士課程修了後に、さらに3年間の研究を経て「博士号」を取得する課程です。
※修士課程のことを「博士前期課程」、博士課程のことを「博士後期課程」と呼ぶケースも多い
医学部・薬学部などは大学そのものが6年制のため修士相当となり、大学院進学=博士課程となります。また、研究の状況や成果によっては3年以上在籍するケースもあります。博士課程まで進むことは研究者としてのキャリアのスタートになり、民間企業よりも大学教授や研究機関での研究者を目指すケースが多くなります。専門性を極めてその道に進みたいと思う場合は博士課程への進路は必須です。
但し、博士号取得時の年齢は20代後半〜30代になることになります。専門職以外の民間企業や公務員の新卒採用について、年齢制限に引っかかるケースもあります。
また、博士課程取得後にそのまま助教や准教授に就ける訳ではなく、ポスドクと呼ばれる任期付き研究者として大学の研究室やその他の研究機関に在籍して研究を続けることになります。一般に「ポスドク問題」と言われる問題ですが、任期が決まっているという不安定な雇用状況の中でも「成果を出すための研究」を継続することが求められ、研究室を転々とするケースもあります。
学部卒業時点で博士課程まで視野に入れている方は少ないと思いますが、キャリアの選択肢として具体的にイメージした上で比較検討してみましょう。私も修士課程に進学した後に博士課程に進む進路も検討したことがありました。
前述したポスドク問題など険しい研究の道はありますが、本当に意味で自分の好きな研究を仕事にできる唯一の職業です(企業の研究職の場合、やりたい研究だけでなくその先の開発・販売・利益などのビシネス的な側面が求められます)。
進学先(研究室)の選択も慎重に
大学院進学については、学部4年時に在籍している研究室でそのまま大学院に進学するケースが一般的です。しかし、大学院進学の選択肢として、大学院(研究室)を変えるということも可能です。
例えば東京大学では、学部生よりも大学院生の方が在籍数が多くなっています。これは東京大学以外からの大学院進学者数が一定数いることによる影響が大きいと考えています。(但し、こういったケースは稀で、東京大学大学院が研究機関としての側面が強いことが背景にあると考えていますが)
したがって、「大学院で研究はしたいけれど在籍している大学の研究室では学びたい内容がない」「大学院で違った分野のスキル・専門性を身に着けたい」と考える場合は、別大学院の受験も検討してみましょう。別大学院進学のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
・自身の興味関心に合わせて研究テーマの選択肢が広がる
現在の所属学部学科の研究室に限った場合、5〜10研究室ほどから選択するケースが多くなると思います。一方で、全国の大学院研究室まで選択肢を広げると数百以上の選択肢を持つことが出来ます。
研究室によっては、大学院に限らずその分野で日本一のレベルの研究室があったり、世界唯一の研究を行っているような研究室もあります。少なくとも2年間の研究生活を行う上で、自分自身が納得のいく研究テーマ・研究室に身を置くことは重要かもしれません。
・就職や進学に有利な条件が得られる場合がある
研究室によっては、特定の企業と共同研究をしていたり、企業の研究開発やエンジニアリング分野において欠かせないスキルを身につけられるケースもあります。また、博士課程までの進学を視野に入れる場合、その研究室の博士課程進学率や博士課程学生の在籍数は見るようにしましょう。実は博士課程進学の環境が整っている研究室は少なく、自身の大学の研究室で博士課程進学率が著しく低い場合は、他の研究室も検討すべきです。
デメリット
・大学院入試のハードル
当然ですが、大学院入試を受ける必要があります。これは同じ大学院に進学する場合も同様ですが、別大学院・別研究室の受験の場合は、これまで大学で学んだ分野とは別に勉強する必要もあります。また、万が一不合格になった場合はその時点で道が閉ざされることになります(留年・卒業して再受験ことは可能ですが)。
一般的には大学受験のハードルよりは低いと言われていますが、大学受験や高校受験と異なり、参考書や問題集などが存在していなかったり、過去問や出題傾向などの情報が著しく少なく、対策が難しい現状もあります。
・専門分野などの知識面および大学研究室の人間関係などゼロからのスタートとなる
学部と同じ研究室に進学する場合、研究テーマも延長線上にあるため、より時間をかけて深い研究ができます。その一方で、大学院から研究室を変えるとゼロから研究をスタートさせることになります。
研究室のルール、機材の扱い、教授や先輩との人間関係などもすべてゼロから学ぶ・築くことになります。遠方の大学院を選択する場合、研究室以外での生活面も変わることになります。
・必ずしも就職や進学に有利になるとは限らない
企業の採用という観点では、大学院名や研究室名での有利不利はありません。あくまでも、その研究室で学んだ経験・専門性、得られたスキルなどが評価されることになり、大学院での実績が重要です。
また個人的には、学歴という観点で見た場合「どこの大学院出身か?」は「どこの大学出身か」ほど評価されないのではないかと考えています。誤解を恐れずに言えば、「東大卒」の社会的評価と「東大院卒」の社会的評価は前者の方が高いということです。※このあたりは、先述した大学院入試の難易度や形態が、大学受験と大きく異なる点に要因があると感じています。
就職活動をやってみるのもアリ
大学院進学か就職か迷っている方や院進学後の就職活動が不安に感じる方は、学部3年生時点で就職活動をやってみるのも良いと思います。
インターンシップから含めれば、大学3年時の夏頃から就職活動がスタートします。本格的なエントリーや選考は3月以降になりますが、一部企業は早期選考として秋冬頃から内々定を出しています。
一方で、大学院入試の時期は4年時の8〜9月頃がピークです(大学院によって異なりますが、傾向的には夏休み時期に集中しています)。院試対策は内部進学の場合は2〜3ヶ月前ほど、外部の大学院進学の場合も3ヶ月〜半年ほどになります。
従って、就職活動をやってみた後に大学院入試準備をすることは、スケジュール的に十分成り立たせることができます。
就職活動についても、最近はオンラインでの説明会や面接も増えており、以前よりも金銭的・時間的な負担は減っています。「もし選考に進んだら」「内定が決まってしまったら」と考えるかもしれませんが、それは実際に就職活動をした場合も同様です。「就職活動をすること」そのものにリスクはありません。
就職活動をやってみて、「やはり院進学より企業就職が良い」と思う可能性もありますし、それはそれで院進学前に気づける良いきっかけになったと言えるかもしれません。
最後に
大学院進学が良いか?学部卒での就職が良いか?
結論としては正解はありません。どちらの選択にしても正解にできるかは自分次第です。
ただし、個人的には「理系で3年時点で就職か院進学か迷っているなら就職活動をやってみるべき」と思います。在籍大学にも因りますが、「院進学率が高い大学に在籍していながらその選択肢以外を考えている・迷っている」という場合は、その専攻分野を続けること・研究活動そのものに迷いや不安があるということになります。
その状態で大学院に進学することはあまり勧められません。大学院生活は大学生活とはかなり違いがあります。コミュニティは研究室内が中心となり、ゼミ発表・学会発表なども含めると、平日は毎日研究活動にどっぷり浸かることになります。また、絶対ではないにしろ、大学院進学後の進路も「研究開発・エンジニアなどの専門職種」が多くなります。そうなると大学院の2年間よりも長くその道に身を置くことになります。
ただ、実はそれよりも重要なのはスケジュールの問題です。
前述したように、スケジュール的に就職活動⇛大学院入試の順番になっています。
就職活動途中やその後に院進学に切り替えることは十分可能ですが、その逆は非常に難しくなります(院試を終える8〜9月頃には民間企業の求人はかなり少なくなります)。迷いがあるまま院進学するつもりでいながら、「やっぱり就活」への切り替えは非常に難しいです。
また、多くの国立大学は4年時から研究室配属になります。4年時に研究室に所属してみて、「やっぱり合わなかった」となった場合のリスクヘッジにもなります(※肌感覚ですが、実はこれは結構あります。結果的に留年して就職活動したり、院進学後に研究活動が継続できなくなって退学した知人も見てきました)。
また、大学院に進学する場合は、研究室はしっかりリサーチ・確認すること。そして、大学院入試(院試)対策をしっかりやって確実に院試に合格することです。
「楽しそうだから」「研究室名や学校のネームバリュー(外部進学の場合)」など、短絡的に選択しないようにしましょう。学部4年時も含めると3年間は研究室中心の生活となります。「3年間就職する先」ぐらいのつもりでしっかり情報収集しましょう。また、専門職を目指す場合は、研究室によってその後の専門職への就職確率も変わってきます。
また、院入は高校や大学入試ほど複数の学校を受験することはないと思います。合格率は高いと言われている試験ですが、それ故に落ちたときのマイナス要素もあります。研究室での居心地はあまり良くないですし、就職浪人と同様にメンタル的にも辛いと思います。大学4年で研究室に配属されたタイミングでは、研究と並行して院試準備も考えるようにしましょう。
※院試準備や院試対策は別の記事で書きたいと思っています
以上です。皆さんのキャリアの参考になれば幸いです!
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